歌は心のストレッチ(24) 《エノケン》

戦後の暗い世相の中で、庶民に笑いを提供してくれたのが浅草で活躍していたエノケン(榎本健一)、ロッパ(古川緑波)、シミキン(清水金一)達コメディアンでした。私はシミキンのファンでしたが、当時テレビなどなく、映画でしか彼らの姿を見ることができず、先生に隠れてよく見に行ったものです。シミキンが堺俊二(正章の父)と組んで主演した映画「浅草の坊ちゃん」の主題歌「浅草の唄」(サトーハチロー、万城目正、藤山一郎

続きを読む »

歌は心のストレッチ (23) 《音感》

一年ほど前、由紀さおりショーが文化パルク城陽でありました。家内ともども由紀フアンで、さっそく駆けつけました。公演ではジャズも数曲歌われ、私の好きな「You will be so nice to come home to 」も、きわめて流暢な英語で歌われました。もともとジャズを歌っていたペギー葉山やフランク永井などは別格にしても、石原裕次郎や美空ひばりたちも流暢な英語で歌われます。多分、微妙な音の違

続きを読む »

歌は心のストレッチ(22)《ブルースとロック》

ブルースは日本の歌謡曲にも多くみられます。例えば、夜霧のブルース(ディック・ミネ)別れのブルース(淡谷のり子)赤と黒のブルース(鶴田浩二)などです。ブルースはもともとは「黒人の嘆きの歌」といわれ、哀れな境遇を嘆く弾き語りうたでした。やがて、ブルースというジャンルが確立したのは、ルイ・アームストロングが歌った「セントルイスブルース」によるといわれています。 一方、エルビス・プレスリーによって一躍世界

続きを読む »

歌は心のストレッチ(21) 《黒人霊歌》

拉致されて北米に連れてこられた黒人たちは、もともと先祖伝来の宗教を持っていましたが、部族や家族がバラバラにされたため、その宗教を伝承することができず、やむなくキリスト教の信徒になりました。 そのキリスト教をベースにした彼らの歌が黒人霊歌、あるいはゴスペルソング、として歌い継がれています。過酷な境遇の中で、希望の光をあの世に見出そうとしたのが黒人霊歌、この世に見出そうとしたのがゴスペルソング、といわ

続きを読む »

歌は心のストレッチ(20) 《黒人の歌》

ストレッチどころか、歌に心の救いを求めた人々がおります。そうです、拉致され、奴隷船に詰め込まれ、北米大陸に連れてこられた黒人たちです。彼らは1人ずつ競売に付されたため、部族や家族がバラバラにされ、集会も禁じられ、孤独と絶望の中で仕事をしながら歌に救いを求め、歌の大衆文化をつくりあげて行きました。ジャズ・ブルース・黒人霊歌・ゴスペルソング・ロックンロール・ピップポップなどです。 米国サウスカロライナ

続きを読む »

歌は心のストレッチ(19) 《ラテン音楽》

前回はメキシコの「マリアッチ」に触れましたが、中南米で生まれ発展したラテン音楽も魅力に満ちています。もう半世紀も前の話になりますが、結婚した頃、待望のオーディオセットを購入し、ぼちぼちレコードを買い始めましたが、ある日大阪曽根崎界隈のレコード店に寄ったところ、クリスマスセールのキャンペーンをしていて、クリスマスプレゼントに応募してくださいと勧められました。どうせ当たりはしないだろうと思っていました

続きを読む »

歌は心のストレッチ(18)《マリアッチ》

  メキシコでは、マリアッチという音楽会が盛んです。ソンブレロに長靴姿の楽団員が楽器の演奏とコーラスでムードをあげ、客席の人々がそれに呼応して、歌い、手拍子をとり、舞台と客席とが一体になって、まことににぎやかな音楽会です。写真撮影や録音は自由ですが、飲食は禁止されているようでした。 メキシコにはマキラドーラという経済特区があって、税制面で優遇されているために日本企業が多く進出しています。

続きを読む »

歌は心のストレッチ(17)《かえり船》

  昭和21年にバタやんこと田端義夫が歌って大ヒットした「かえり船」(作詞:清水みのる、作曲:倉若晴生)は当時の世相を表し、人々の共感を得たことがヒットにつながったといわれています。昭和21年は終戦から1年が過ぎた時で、海外に展開していた軍人さんの復員や、居留民の引揚が本格化した年です。懐かしい日本の土地に踏み入れて、流れているこの曲を聴き、自分の境遇とあわせて哀愁をおびた曲と詩に心の琴

続きを読む »

歌は心のストレッチ(16)《H・ベラフォンテ》

現役時代、仕事で英国・バーミンガムを何回か訪問したことがあります。ホテルの近くに瀟洒なパブがあって、ここで1ポンドコインをカウンターにおいてジントニックを飲むのを楽しみにしていました。ここにはピアノがあって、おじいさんがいつも弾いて客を楽しませてくれていました。あるとき、ある曲を弾いていたら客の1人がピアノに合わせて歌い始めたところ、他の客も追従し、店中に歌声が響き渡りました。聞いたことがあるよう

続きを読む »

歌は心のストレッチ(15)《いなかのミュージカル》

もう7年も前のことになりますが、ふるさと(大分県玖珠町)の友人から「おだち集まれ」という新聞広告を受け取りました。「おだち」とは方言で、よく言えば「何事も前向きで、積極的な人」、悪く言えば「目立ちたがりな人」という意味で、動詞は「おだつ」です。幕末から明治にかけて、村の殖産興業に大きな功績を遺した先達の活躍をテーマにしたミュージカルの出演者を募集する広告でした。「おまえも結構おだちだからな」「どう

続きを読む »