歌は心のストレッチ(20) 《黒人の歌》

ストレッチどころか、歌に心の救いを求めた人々がおります。そうです、拉致され、奴隷船に詰め込まれ、北米大陸に連れてこられた黒人たちです。彼らは1人ずつ競売に付されたため、部族や家族がバラバラにされ、集会も禁じられ、孤独と絶望の中で仕事をしながら歌に救いを求め、歌の大衆文化をつくりあげて行きました。ジャズ・ブルース・黒人霊歌・ゴスペルソング・ロックンロール・ピップポップなどです。

米国サウスカロライナ州に南北戦争の火ぶたが切っておとされた処として有名なサムターという町があります。現役時代、仕事でこの地を訪問したことがあります。サウスカロライナ州はリンカーン大統領の奴隷解放政策に反対し、アメリカ合衆国を離脱し、独立宣言をして、南北戦争の原因をつくった州です。

訪問した工場の作業者はほとんどが黒人で、工場の周辺には今では珍しくなった綿花畑が延々と展開されており、思わず中学時代に習った黒人霊歌もどきの「オールド・ブラック・ジョー」が頭をよぎりました。以降、数回に分けて「黒人の歌」を概観してみましょう。

注)「オールド・ブラック・ジョー」は白人のフォスターが作曲したものであ   り、黒人霊歌とはいえません。