Tさんは饒舌であった。
入所者の集まる娯楽の席で他の入所者と共にハーモニカの合奏を披露したり、部屋では古茶を楽しみ水彩の絵筆を駆使し、読みかけの単行本サムエル・ウルマン著の「青春とは心の若さである」の解説まで話してくれた。
入所してわずか1年半のTさん、既に介護老人施設での時間を自分流に楽しむ術を身につけて、他の入所者や施設職員との円滑で和んだ関係を築いていた。その89歳のTさんとは…、そして、その生きざまは?
【Tさんとの再会】
Tさんが突然に正道官衙ストレッチに来られなくなって、二年たつだろうか?長患いの奥さまを5年ほど前に亡くされて、一人暮らしの高齢世帯にもようやく順応された2年ほど前に、膀胱癌の再発ということで入院された。
その後、正道官衙ストレッチに参加されなくなった。どうしておられるかな?既に天国の奥さまのもとに召されているのではと思っていた。(失礼)ところが、過日、正道官衙での催事の混雑の中でTさんとばったり再会したのである!『も~、死んではると思っていました』と、言いながらも顔色のいいTさんとの再会を喜んだ!
(以下はTさんとの6年余りの交友と高齢者施設「春日の森」訪問時の会話から感じた思いを中心として記す)
【Tさんが選んだ終の棲家は?】
Tさんは息子さん、娘さん(いずれも60歳前後の年齢)の強い勧めで、『介護付有料老人ホーム:ニチイケアーセンター宇治春日の森』に1年半ほど前に入居された。
一人暮らしを心配された子息が、様々な老人ホームを探して決められたこの「宇治春日の森」は、平成26年3月に開設、3階建ての鉄筋コンクリート造りで、総室数は54室、定員54名、完全個室である。 満室だ!
一口に言って清潔感溢れる施設であり、共有スペースとして、談話室や入浴設備、ケアー施設等が各階にあり万全である。 勿論、全館冷暖房空調つきである。
居室面積は19㎡(11畳)前後でビジネスホテルのシングルルームを想起して頂ければ…、ベット.食卓テーブルとテレビ書籍などが置ける小型の収納庫が2台あり、押し入れと、車いす対応のトイレが敷設されている。
【Tさんの介護付有料老人ホームの選択肢?】
Tさんは89歳、病に侵された妻を10数年自宅で介護、5年前に見取り、入所までは一人暮らしの生活であった。
妻の逝去後、約3年余りの一人暮らしの生活は、子息からみて危なつかしく子息の心の負担となっていた。
さりとて同居は無理!齢を重ねる老父の自宅での一人住いのいく末は一層危なく不便も増だろう、体調悪化となってから老父の処遇を考えるよりも…との考えに至られたようである。
介護施設入居、子息との同居、入院?…、病魔が深刻になれば老いの身に迫る選択視はさほどあるまい。
それは70歳後半以降の高齢者の共通の認識だろう。 いっそ、認知症になったり、重篤な病に倒れ自身で判断ができない状態になれば…『我関せずお任せに!』だ!
Tさんは妻の介護生活で身につけ生きていくに必要な炊事洗濯等の生活の知恵はそれなりに身につけていた。Tさんは子息の強い勧めもあり、この先のことを考え、話し合いの結果、自らの意思をもって❛介護付有料老人ホーム❜の入居を決断されたのである。
【介護付有料老人ホーム:宇治春日の森の生活は?】
まず一番の関心事は『入居費は?』 『月々の支払いは?』と、イの一番にお金のことが気にかかるでしょう。
次に、『入所後の生活はどんなんかな?』 『果たして馴染むことができるかな?』と与えられた境遇への適応性への危惧が先立ち、結論を先送りしてしまう人も多かろう。
Tさんは衣食住が確保されれば、順応する柔らかさ適応性は抜群とお見受けしていた。その通りだ!
それでは有料介護施設春日の森の処遇は如何に…
・前述のとおり個室で三食とも用意される。
・健康チェックは月2回提携医師の巡回による医療処置
・持病に対するケアーは月単位に指定病院送迎処置
・必要によりMRI.健康診断.のスケジュール本人対応
・入浴は週2回.洗濯は有料で依頼若しくは本人行う
・娯楽、施設職員他の催事が計画される。参加随意
・単独外出は身元引受契約者と施設との決め事による
・買い物代行や必要に応じてマッサージの手配も行う
兎に角、身元引受人が安心して入所させる健康面も含めた対価として施設側には月額利用料180,400円支払うことで担保されておるのである。
月々の支払いは身元引受人が行うが施設利用料180,400円に自己負担金をプラスして、凡そ23万円程度支払っているようだ。自己負担とは介護保険利用料の1割負担に、買い物支払金、マッサージ代、病院などの医療費、理容費が施設利用料にプラスされている。
入居時一時金(入居料)0円だ!月額払いのみで入居可
【最後に…】
入所者は圧倒的に女性だ!寝たきりや車いすが必要な方もおられ、昭和一桁生まれの方が多くを占めている。
そうした中でTさんは膀胱癌の経過観察という体調以外は歩行も含めて思考も鮮明、そのうえ『元気』『賢い』『ヘルパーさん、看護師さん、医師等とのコミュニケーション能力にたけておられる』『かわいらしい年寄り』という身の処し方を心得ておられる。
おまけに多趣味とお見受けする。本人いわく、「今日をどのように楽しく過ごすか…」「ヘルパーさん、看護師さんの優しさを喜び、明日への生きる力としていますねん」 と… 唯々、感心するのみである。
最後までTさんから不満とか愚痴は聞かれなかった・・・
(訪問は88歳のHさんと私yamashinです。)