正道官衙遺跡公園に卯の花が咲く…石碑万葉歌解説(10)

青葉若葉の新緑のこの時季、卯の花が美しく清楚に咲いている。思い出すのは 童謡“夏は来ぬ”である。 歌詞の三番までは歌ったことがある抒情歌である。

夏は来ぬ
(佐々木信綱 作詞 小山作之助 作曲)

卯(う)の花の、匂う垣根に   時鳥(ほととぎす)、早も来鳴きて
忍音(しのびね)もらす、夏は来ぬ

さみだれの、そそぐ山田に 早乙女(さおとめ)が、裳裾(もすそ)ぬらして
玉苗(たまなえ)植うる、夏は来ぬ

橘(たちばな)の、薫るのきばの   窓近く、蛍飛びかい
おこたり諌(いさ)むる、夏は来ぬ

楝(おうち)ちる、川べの宿の    門(かど)遠く、水鶏(くいな)声して
夕月すずしき、夏は来ぬ

五月(さつき)やみ、蛍飛びかい    水鶏(くいな)鳴き、卯の花咲きて
早苗(さなえ)植えわたす、夏は来ぬ

◎正道官衙遺跡公園の石碑とそばに植えられた‘卯の花’ 可憐に咲き匂い爽やか!

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◎うのはな

霍公鳥(ほととぎす)来鳴(きな)き響(とよ)もす 卯の花の 共にや来(こ)しと 問はましものを

解説

ほととぎすが 来て鳴きたてています 卯の花と 共に来たのかと 尋ねられたらよいのですが…

共にや…~と共にで、ほととぎすの来鳴く時期が卯の花の咲く時期とほぼ同じだ問はましものを…物を言わないほととぎすに尋ねることができないのを残念に思って言う。

単なる望遊の作とみる説もあるが、作者の意図は、旅人の意中をを汲んだ個人としての弔問にあろう。ほととぎすを冥界からの使者と見なす文証は中古に始まるがこの歌はその先蹤(せんしよう)をなすものではなかろうか?

※正道官衙遺跡公園には今回掲載した “うのはな”の他、下記の万葉の木々が植樹されている。 (木々の名)

ねむ やなぎ つげ つばき やまたちばな(やぶこうじ)しらかし つつじ やまざくら しい えのき こなら くぬぎ にれ はぎ うのはな(うつぎ)やまぶき からたち まゆみ かつら つき(けやき)ふじ あしび かわやなぎ(ねこやなぎ) なし なつめ もも たちばな まつ ゆづりは うめ である。

※太字は解説済みの詩句 写真はクリックしてください。拡大します。(完)