正道官衙遺跡公園石碑の万葉歌解説(9)

桜もすっかり葉桜となり、公園の周囲に植えられている“つつじ”がピンク、白と咲き、山吹の黄色の花が青葉若葉に映え色彩豊かな正道官衙に爽やかな風が…

石碑の万葉歌 ‘ふじ’ ‘やまぶき’ の二首 詩句をご紹介いたしましょう。

◎万葉歌 ふじ … 藤棚に紫色、白色と香しい花の匂いが漂う

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山部宿禰赤人(やまべのすくねあかひと)の歌                 恋しけば 形見にせむと 我がやどに 植ゑし藤波 今咲きにけり

解説:                                 恋しくなったら 偲びぐさにしようと思って 家の庭に 植えた藤の花は今咲き始めた

恋しけば…この恋シケは未然形。形見…ここはある人を偲ぶためのよすがの品。 藤波…藤の雅語

◎万葉歌 やまぶき

花咲きて 実はならねども 長き日(け)に 思ほゆるかも 山吹のの花

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解説:花だけ咲いて 実は成らないのに 長い間待たされることよ 山吹の花は

花咲きて…このテは逆説的用法 実は成らねども…実ニナラズは、しばしば実らぬ恋の比喩に用いられるために、この歌にも寓意があるかとする説がある。長き日(け)に思ほゆるかも…ケは日数、花が咲くまで待ち遠しく思われることを言う。山吹の花…山吹はばら科の落葉低木 春濃黄色の花を開く。

古歌 一首

七重八重 花は咲けども山吹の みの一つだに 無きぞかなしき

太田道灌が遊猟に出ていて、にわか雨にあい、とある農家に入り雨具を借りようとしたところ、少女は蓑の無いことを言わずに、古歌の「七重八重 花は咲けども 山吹の みのひとつだになきぞかなしき」に因み山吹の花一枝を折って差し出したのに太田道灌はその意を解せず当惑した伝説が、「太田道灌蓑ヲ借ル図ニ題す」漢詩(絶句)として吟じられている。

※正道官衙遺跡公園には今回掲載した “ふじ” “やまぶき” の他、下記の万葉の木々が植樹されている。 (木々の名)

ねむ やなぎ つげ つばき やまたちばな(やぶこうじ)しらかし つつじ やまざくら しい えのき こなら くぬぎ にれ はぎ うのはな(うつぎ)やまぶき からたち まゆみ かつら つき(けやき)ふじ あしび かわやなぎ(ねこやなぎ) なし なつめ もも たちばな まつ ゆづりは うめ である。

※太字は解説済みの詩句 写真はクリックしてください。拡大します。(完)