グランドピアノを眺めながら…何げなく片手で鍵盤を弾く彼とのひと時…
北新地のクラブでの出来事だ…
彼は早稲田大学卒業、入社7~8年経過した頃だ、私は30歳代後半であったが、彼の歌う八代亜紀の「舟歌」は秀逸で周囲からせがまれたときに歌う
♯お酒はぬるめの 燗(かん)がいい
肴(さかな)はあぶった イカがいい
女は無口な ひとがいい♭
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↓ひろしま3000人の第九会場 ↓スイス.フランスで共に歌った第九の友美濃歌舞伎出演
照れながら歌う舟歌は、八代亜紀のキイとは違うが情感たっぷり、聞く人をしてうっとりとさせ、彼の人柄すら感じさせる歌唱力だった。
ある日、私たちの上司に誘われて大阪北ノ新地のとある高級クラブに連れて行ってもらった。
このクラブは私たちの給料ではとても行けるようなところではなく、雰囲気、品格からして、ものおじしてしまうような豪奢なところであった。
勧められるままに席につきグラスを傾けているものの、どうも場違いだ!ところが私より5~6つ若い後輩のNは物怖じしたところもなく、それどころか上司に促されると近くにあったグランドピアノに近づいていき、気負うことなく鍵盤を静かにたたきながら弄んでいた。
『学生時代東京で大分遊んできたな彼は…』と見つめながら物怖じしないNの動作に見入ったものだ。
あれから30数年経過し私が68歳のとき、Nが弾いていた情景が忘れられず、『楽器を弾きたい』『音符も読めないがピアノを習おう』との思いに、意を決して、実現するために個人レッスン先を探した。
幸い近くで素敵なピアノ教師に巡り合い悪戦苦闘であったが、13年にわたって個人レッスンの時間を楽しむことができた。そして、この歳で幼い子たちに混じって発表の舞台も楽しむことができた。
一昨年、個人レッスンは終了したが、今では心赴くままに「峠の我が家」「遠くへ」等、簡単な曲から、ちょっと難しい歌曲を弾き、座敷に鎮座するマイピアノで楽しんでいる。
↓ピアノ発表舞台 ↓第九の友結婚式に招かれて、マレーシアに渡る
Nは今では孫を相手に悠々自適の日々を楽しんでいるようだが…、年賀状・暑中見舞いの書状の行間に、共に仕事に励み、アフターファイブを満喫した当時を懐かしんでいるようでこれまた楽しい。
私にはいろんなきっかけで、思いもよらない事々に挑戦し、経験と共に喜び楽しみを味わい、多くの友情を育み、そして、地域社会においても多くの友を得ることができた。更に思い起こせば、28年前にベートーベン第九に巡り合い、挑戦し、歌えるようになったこと、無知だった交響曲の調べにも心をときめかせることができるようになったこともそうだ!思い切って全てのご縁に挑戦し、飛込、高みを目指すことができた音楽との出合こそ、私の人生をどれ程豊かにしてくれたことか…。感謝、感謝だ。