枯淡の味、円熟の艶… なんとも表現が難しい程に魅了された老女の舞だ!
過日、お招きいただき京都府民ホール・アルティの舞台、京都・滋賀と広域でご活躍の家元・会主が一堂に集まる『長月に舞う』舞台での❛天羽会桐流の桐 彩楽さん❜…
小柄で柔らかな身のこなし、長年培ってこられた立ち姿が何とも素晴らしい。聞くところによると35,6年前に、この舞踊に魅入られて修行されてきたそうだ。というと、60歳前後の歳で踊りを始められたのであろう。柔和のお顔、表情、中腰の柔らかな立ち姿、すっと伸びた指先・・・素人の私が感じるに、まさに、老いを拭い去る円熟の舞だろう、枯淡の味だ、素晴らしい!
きっと、この老女は幸せなんだろう。 毎日、踊ることに魅入られて、次なる目標・舞台を目指して、生活の一部に自らの踊りの時間を組み込み、その自ら好んだ慶びの時間を大切にされると共に、健康にも一段と気をつけられて日々充実されているのであろう。 こんな幸せなことはないだろう。
桐彩楽さんの後に踊られたのが87歳の男性、そして、93歳の天童龍輝(鳥居)さんだ! 健康であること、舞の素晴らしさは会場いっぱいに広がる万雷の拍手、そして『凄いな~』『立派だな~』との感嘆の呟きだ!
天童龍輝(鳥居)93歳 二代目無法松
人生50年から100年の長寿の時代、余生なんて言ってられない…有り余る時間をどう過ごすかによって真の健康長寿を寿げるんだろう。 三つも四つも欲張るまい! 自らの日々の中から、なにか一つ夢中になる ことを選び出し、取組んで、なお且つ、そのことに満足する心も必要だろう。
心に甦るカール・ブッセの詩…
≪山のあなた≫ カール・ブッセ 上田敏 訳
山のあなたの空遠く 幸い住むとひとのいう
ああ、われひとと尋(と)めゆきて
涙さしぐみかえり来(き)ぬ
山のあなたになおとおく 幸い住むとひとのいう
(進)