◎正道官衙遺跡公園には万葉の木々が植樹されている、傍にたてられている石碑に木々に想いを寄せた万葉歌が記されています。下記の太字の木々は解説済みです。※印は今回解説の万葉木々
ねむ やなぎ つげ つばき やまたちばな(やぶこうじ)しらかし つつじ やまざくら しい えのき こなら ※くぬぎ にれ はぎ うのはな(うつぎ)やまぶき からたち まゆみ かつら つき(けやき)ふじ あしび かわやなぎ(ねこやなぎ) なし※なつめ もも たちばな まつ ゆづりは うめ
今回解説の詩句
◎なつめ
玉箒(たまばはき)刈り来鎌麻(こかまま)室(むろ)の木と 棗(なつめ)が本(もと)と かき掃かむため
訳:玉箒を 早く刈って来い鎌麻呂よ むろの木と 棗の木の本を掃除するために
解説 キク科の落葉小低木こうやぼうき。これを束ねて箒にすることがある。(室の木)鎌麻呂…題の名から思いついた人名。従者などに擬して呼び掛けた趣
棗の木棗の実
◎くぬぎ
橡(つるばみ)の 袷(あわせ)の衣 裏にせば 我強ひめやも 君来ませぬ
訳:橡染めの 袷の衣を 裏返すように格下げする気なら わたしは無理強いしようか なんであの人は来られないのだろう
解説:橡の袷の衣…ここは橡染めの衣服の、裏地がついているものをさし、相手から最近すげなくされている自分をたとえた。 裏にせば…袷の衣を裏返しするのだったら。妾扱いにする所存ならば。の意であろう。 我強ひめやも…このツヨフは、従来の待遇を続けてくれ、と要求することをいう。 君が来まさぬ…連体止め。上にナニカのような疑問副詞が省かれている。(完)