敗戦後の混乱からようやく立ち直り、高度経済成長へと進み始めた昭和30年代初頭、各地で「歌声喫茶」がオープンし、若者たちが声を張り上げていました。 当時カラオケはなく、ギターやアコーデオンの伴奏が主流でした。
京都にも四条河原町近くに「炎」という歌声喫茶があって、若者で賑わっていました。ここでよく歌われたのが「ロシア民謡」で、当時デビューしたダークダックスが歌っていた「トロイカ」「カチューシャ」「モスクワ郊外の夕べ」「ともしび」などが人気曲目でした。
その後、カラオケが流行りだし、歌声喫茶は姿を消し、ロシア民謡とも縁が薄くなりましたが、10年ぐらい前、このロシア民謡に再会しました。
南座の四条通りをはさんだ北側にロシアレストランがあって、ここで「ロシア語で歌うロシア民謡」という講座が開かれ、友人に誘われて参加したからです。
講師はシャンソン歌手の山之内重美さんでした。彼女は京都市出身で、大阪外大ロシア語科卒業後、モスクワ国営ラジオ局に勤務した経験の持ち主でした。
カタカナロシア語で「一週間」「カチューシャ」「ともしび」などを教えてもらいましたが、受講者にはロシア語を学んだ方が多く、私は分が悪くて結局尻切れトンボになってしまいました。
「カチューシャ」は今でも覚えていますが、「一週間」と「ともしび」は頭から消えかかっています。